悪い種子が芽ばえる時

出版は1990年になっているが奥付によると2000年7月に8刷がかかっている。さらに底本になっているのはサンケイ文庫で1987年の刊行、原作のコピーライトは1986年となっている。原題は「NURSEY CRIMES」。何が言いたいのかというと、これは地味に売れ続けている本であるということである。ちなみにブックオフで100円で購入。いつ買ったのかも覚えてない。
作者は長年ロマンス小説を書いてきてからミステリーに転向したとある。ブックカバーの解説には「推理小説に転向」とあるけど、この時代は推理小説とミステリーの区別があまりついてなかったはずである。この辺の言葉の変遷はこのミスとか読んでくとたまに解説される。
作者はおばさんとみて間違いないだろう。解説にもそう書いてあるが、読んでみてもそう思った。
一気に読める安定性に感心した。アーティストではなく職人による娯楽小説ですよ。ほころびの無い実に丁寧な作り。扱ってる犯罪は幼児犯罪で、そこが売れ続けている理由だろう。下品な作品じゃないです。六歳の少女が四歳の少女を殺してから、自分の邪魔になる人物を気まぐれに殺していくというストーリーだけど、このあらすじで想像する過激な内容を期待すると肩すかしをくらいます。
丁寧に感想書いても、なんていうか、全体の安っぽい作りはフォローできないし、ぶっちゃけ、娯楽小説の歴史の中でも実に大したことない作品だと思われるので、これを読んだ人が探して読む必要はまったくない。ただ、作者が自分の実力やスタイルを知りつくしているところからくる気持ちよさだけはある。中堅のよさって感じ。

悪い種子が芽ばえる時 (扶桑社ミステリー)

悪い種子が芽ばえる時 (扶桑社ミステリー)