ウォッチャーズ

ウォッチャーズ〈上〉 (文春文庫)

ウォッチャーズ〈上〉 (文春文庫)

クーンツは日本で最初に紹介され始めた頃に読んで、ファントムとかが全然面白くなかったので――「全然」というのは誇張。この作者が一部にファンがいるというのは理解できたし、職業的娯楽作家としてアメリカ人の評価はされるだろうなと思った――それ以来、鬼門扱いであった。唯一面白かったのが「ベストセラー小説の書き方」だったと言ってよい。
ベストセラー小説の書き方

ベストセラー小説の書き方

古本屋でこっちの方を買って読んだ。これはなかなか面白かった。面白いことは手を抜かず書け、無駄なことは書くな、というのが素直に頭に入ってきた。
まあ、それはそうとずいぶんそれから長いあいだクーンツの小説は私の中でつまらないものと固定されていたのだけど、最近、id:COCO さんのところ(coco's bloblog - Horror & SF)でクーンツを褒めているのを見かけたのである。詳しい記述は忘れてしまったが、「化けてから」という表現があった。私が読んだのがクーンツの初期作品であることは分かっていたので、もしクーンツがこの後で化けたのだとしたらちょっと損しているかもしれないと思った。そんなわけでブックオフで眺めたら、クーンツのターニングポイントと多くの人が評するこのウォッチャーズを見つけることができたのである。なぜこれがターニングポイントだと分かったかというと、同じ本棚のミスター・マーダーの解説で瀬名秀明氏が述べていたからである。
で、感想。
それまで読んだクーンツ作品と同じく舞台装置とプロットがとんでもなく安い。相変わらずのB級映画だ。だけど、確かにそれまでに読んだクーンツ作品に比べて読める。読ませる。ほほう。クーンツというのはこういう作家だったのかとやっと分かったような気になった次第である。
ただし、訳者の松本剛史はちょっとひどい。フィートやマイルがそのまんま文章に出ているのである。身長○○フィートとか書かれても日本人に分かるわけないじゃないか。それに作者は別にフィートという単位を読者に伝えたかったわけじゃないだろう。身長が読者に把握できればいいんだからその辺を訳すことをサボらないで欲しい。どうしても単位を書きたかったのならルビでSI単位を使って説明してくれればよかったのに。まあ、フィートやマイルはそれでも百歩譲れば我慢しよう。けど、気温を華氏のまま記述するのは馬鹿だといっていいと思うぞ。こんな奴に翻訳をやらせるな。