オフシーズン

オフシーズン (扶桑社ミステリー)

オフシーズン (扶桑社ミステリー)

いろいろ書きたいところはあるけど、とりあえず面白いと言っておく。
オフシーズンのリゾート地に集まった男女六人に食人族(読めばこれがいわゆる食人族とは違うものだと分かるんだけど、この言葉以外に表現のしようがない)に襲われるという話。
こういう単純な小説は映画だと面白いけど文章で読んでも面白くないなんてことが起こりがちだけど、これはそんなことはない。また、そこそこ意表をついてくるので「こいつが生き残ったか」というシーンが多いのもいいです。
以下ちょっとネタバレ。
「お、これは」と思ったのが、警官隊が遭遇するシーン。警官たちが一瞬にして異常な心理状態になるところを一行二行で簡潔に表していて、これが非常によかった。この小説は序盤から襲撃者のグループの正気は失われているので、読者はそこから距離を置くことになる。遭遇した宿泊客の心理状態もほとんどパニック状態なので(そしてそれを丁寧に描写したりはしないので)感情移入からは程遠い。警官だけが日常の中にいるのである。それが、ちょっとの襲撃で一瞬にしてスイッチが切り替わって暴力というか原始的なモードに入る。そこがうまいです。