蟹工船

愛蔵版 ザ・多喜二―小林多喜二全一冊

愛蔵版 ザ・多喜二―小林多喜二全一冊

著者の略歴を見ると昔の作家ってすげーなと思う。「お前、本なんか書いている場合じゃないだろ」っていう時代に本を書いてそれを発表しているのである。まわりの人間からは、それどころじゃないだろ、空気読めよと言われても仕方ない感じ。逆に言うと執筆というものにそれだけの強い必然性があったってことなんだろうな。
旧仮名遣いはさすがに読みにくい。スタートも遅い。けどジワジワとフラストレーションが溜まっていくとのめり込んでいく。本の中の当事者よりも読んでいるこっちの方が沸点が低い感じなので「まだ我慢するのかよ」ってところが読み応えあった。労働組合と団体交渉で一番大事なところもよく分かった。
うーん。小説としての面白さは時代性もあって純粋に評価しにくいところがあるんだけど、個人的な部分に響きところがあったのでよかったです。それはもうハッキリと「一つ勉強になった」と言えるくらい。万人に共通ではないと思うのでオススメまではしませんが、短編なので時間を割くことで損をする時間は少ないと思います。
いや、自分は完全に読んでよかったと思えるのですが。