蟲師のこと

ものすごく久しぶりに単行本を読んだのである。一巻に収録されている話は,「緑の座」「柔らかい角」「枕小路」「瞼の光」「旅をする沼」で,どれもアニメになって放送されたものばかりである。
それで思ったことがある。この漫画は相当変だということだ。
最初の「緑の座」からしておかしい。緑が異様なくらい鮮やかな所だなというセリフが冒頭にあり,杯を再生するシーンでも,その色について強調されている。辺り一面苔だらけという描写もそう。
何が変って,漫画のくせに,色や匂いについての描写が多すぎるのである。読み直して思ったのだが,白黒の普通の漫画で,このような,読者に伝わらない部分が重要な要素になるストーリーというのはあまり見たことがない。おかげで,アニメで映像を補完してもらったことが実に両者にとって幸いなことであるように思うのである。今後,この漫画はアニメの印象からは逃れられないだろうけど,それ以前に,漫画の構成に,その素養があり,アニメ化以前から作者は色や匂い,空間や音を意識していたということを忘れないようにしたいと思う。これはもともとがそういう作品だったのだ。

蟲師 (1)  アフタヌーンKC (255)

蟲師 (1) アフタヌーンKC (255)